犯罪被害者の方の多くは、自らが被害に遭った犯罪事実の詳しい内容(例えば、加害者の名前、住所、犯行の動機や目的、なぜ自分や家族が犯罪に巻き込まれたのかなど)を知りたいと思っています。その情報を一番多く持っているのは、警察や検察庁といった捜査機関ですから、捜査機関が調べた記録を見せてもらったり(閲覧)、コピーさせてもらうこと(謄写)は、有効な情報入手の方法です。これが「刑事記録の閲覧謄写」と呼ばれる制度です。
ところで、従前、加害者はほとんどの記録を見ることができたのに対し、被害者はメディアが入手することができる資料(例:判決文)ですら、満足に手に入れることができないという絶対的な不条理がまかり通っていました。
平成19年の抜本的な改正により、被害者も刑事記録を原則として見ることができるように改善されましたが、「刑事記録の閲覧謄写」は、捜査や刑事裁判への影響、プライバシーの保護などの理由で一部制限されることがあります。
開示が十分になされない事案においては、当フォーラム所属の弁護士にご相談下さい。
「刑事記録の閲覧謄写」が認められる時期と開示される内容について、ごく簡単に例示すれば、以下のとおりです.
① 刑事裁判として起訴される前(捜査段階)
原則として、刑事記録の閲覧謄写は認められていません。ただし、担当検察官と話した上で、証拠の一部(実況見分調書など)を見せてもらったという事案もあります。
② 不起訴となった場合
実況見分調書や写真撮影報告書などの客観的な証拠については、原則として、閲覧謄写が認められており、一定の場合には、供述調書の閲覧謄写が認められることもあります。
③ 刑事裁判として起訴された後、第1回公判期日前
全ての被害者に当然認められるわけではありませんが、被害者参加対象事件の被害者については、刑事記録のうち、刑事裁判で証拠として提出される予定の記録については、閲覧謄写が認められています。
④ 刑事裁判として起訴されて、第1回目の裁判後、刑事裁判が確定する前
平成19年以前は、損害賠償請求訴訟を提起するなど正当な理由がない限り、原則として見ることはできませんでしたが、改正により、単に事件の内容を知りたいという理由だけでも、開示されるようになりました。起訴された刑事事件の被害者は、裁判所にある記録(訴訟記録)について閲覧謄写をすることができます。この場合、裁判所に申出を行うことになります。
⑤ 刑事裁判が確定した後
確定した刑事事件の記録が裁判所から検察庁に戻ってきた後に、閲覧謄写を求めることができます。この場合、検察庁において申請を行うことになります。
以上のような制度となっていますが、担当した裁判官や検察官によっては制度への理解が不十分であるため、開示が広く制限されることもあります。当フォーラムは、そのような制限的な運用に対しては改善を求めています。