被害者参加制度、損害賠償命令制度とともに、平成20年12月1日から施行さた制度です。犯罪被害に遭われた方の情報が、従来よりも一層保護されるようになりました。
1 裁判所による非公開決定
平成19年の法改正で、一定の事件の被害者(例えば、性犯罪等の被害者)の氏名、住所、学校名など、被害者を特定する事項(これを「被害者特定事項」といいます。)につき、被害者から申出があった場合は、裁判所はこれを非公開とする旨の決定(以下「非公開決定」といいます。)を行うことができるとされました(刑事訴訟法290条の2)。
2 非公開決定がなされたときの被害者情報の保護の方法
非公開決定がなされた場合、検察官は、起訴状や証拠書類の朗読にあたり、被害者特定事項を読み上げないようにしなければなりません(刑事訴訟法291条2項、305条2項)。
また、裁判所は、証人尋問の内容が被害者特定事項に関係するときは、その尋問を制限することができることになりました(同法295条2項)。なお、これに関しては、犯罪の証明に重大な支障を生じたり、被告人の防御に不利益を生ずるおそれがある場合には、その制限は許されないという留保付きである点に注意が必要ですが(同法295条3項)、留保付であれ被害者の特定につながる情報がより手厚く保護されるようになったという意味では非常に意義のあることだと思われます。
3 被害者情報の保護の要請
検察官は、裁判所に証拠を提出しようとするときは、被告人の弁護人に対し、あらかじめ証拠を見せなくてはいけません(同法299条1項)。しかし、被告人が被害者の住所などを知ると、裁判が終わった後に仕返しにくるおそれもあります。
そこで、検察官は、弁護人に証拠を見せるときに、被害者特定事項を教えると、被害者等の名誉・社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあるとき、又は被害者やその親族の身体・財産に害を加えたり、これらの者を畏怖・困惑させる行為がなされたりするおそれがあるときには、弁護人に対し、被告人やその関係者に知られないようにすることを求めることができるとされました(同法299条の3)。
なお、これについても、被告人の防御に関し必要がある場合については、除外するという留保付であるという点に注意が必要です。