被害者情報の保護

平成19年6月27日に公布された犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律の制定により,犯罪被害に遭われた方の情報がより一層保護されるようなりました。

1.公開の法廷における被害者の氏名等(被害者特定事項)の秘匿
特定の事件の被害者(例えば,性犯罪等の被害者)に関する「被害者特定事項」(氏名及び住所その他当該事件の被害者を特定させることとなる事項のことをいいます)につき、裁判所はこれを非公開とする旨の決定(以下「非公開決定」といいます)を行うことができるとされました。(刑事訴訟法290条の2)

この決定がなされた場合、検察官は、起訴状の朗読にあたり、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行わなければならず(法291条第2項)、また、検察官、被告人又は弁護人から取調べの請求がなされた証拠書類の朗読についても同様に被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行わなければならないことになりました。(刑事訴訟法305条第2項)

2.訴訟関係人のする尋問や陳述における被害者特定事項の秘匿
また,裁判所が上記の非公開決定をした場合、裁判所は、公判廷において訴訟関係人のする尋問又は陳述が被害者特定事項にわたるときは、当該尋問又は陳述を制限することができることになりました。(刑事訴訟法295条2項)

なお、これに関しては、制限した結果、犯罪の証明に重大な支障を生ずるおそれがある場合又は被告人の防御に実質的な不利益を生ずるおそれがある場合については、その制限は許されないという留保付きである点に注意が必要ですが(同法295条第3項)、留保付であれ被害者の特定につながる情報がより手厚く保護されるようになったという意味では非常に意義のあることだと思われます。

3.証拠開示の際における被害者特定事項の秘匿
検察官、被告人又は弁護人が証拠書類又は証拠物の取調を請求するにあたっては、あらかじめ相手方にこれを閲覧する機会を与えなければならないとされています。(刑事訴訟法299条第1項、これを「証拠開示」といいます)

この証拠開示に当たり、検察官は,被害者特定事項が明らかにされることで、被害者等の名誉若しくは社会生活の平穏が著しく害されるおそれがあるとき、又は被害者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え若しくはこれらの者を畏怖させ若しくは困惑させる行為がなされるおそれがあるときには、弁護人に対し、被告人その他の者に知られないようにすることを求めることができるとされました。(刑事訴訟法299条の3)
なお、これについても、被告人の防御に関し必要がある場合については、除外するという留保付であるという点に注意が必要です。