被害者参加とは

被害者参加制度とは

従来の刑事裁判は、裁判官、検察官、被告人、弁護人だけで行われ、事件の最大の当事者である被害者は置き去りにされてきました。
その反省を踏まえ、被害者が直接裁判に参加して自ら発言し、被害者の生の声を裁判官や裁判員に直接伝えていくために作られたのが、被害者参加制度です。
この制度は、国民の大多数が望んでできた制度です。
被害者参加制度では、被害者は刑事裁判に直接参加し、検察官と密接なコミュニケーションをとりながら、一定の訴訟活動をすることができます。
そこでできる詳しい内容は、下の「被害者参加人にできること」をお読みください。

被害者参加制度は、被害者の尊厳を守るため、ヨーロッパの多くの国々では既に30年以上も前から採用されていましたが、わが国では、平成20年12月1日からようやく施行されることになりました。
この制度の直接の根拠は、平成19年に改正された刑事訴訟法316条の33以下にありますが、より根本的には、犯罪被害者等の権利を認めた犯罪被害者等基本法(平成16年国会成立)にあり、さらには、「刑事司法は社会秩序の維持とともに『犯罪被害者等のためにある』」と宣言した犯罪被害者等基本計画(平成17年閣議決定)にあります。

被害者参加制度では、参加した被害者は「被害者参加人」と呼ばれ、第一審だけでなく控訴審や上告審からでも参加できますし、審理の途中からでも参加できます。
もちろん、参加するかどうかは被害者の自由で、参加することは義務ではありません。

参加の申し出ができる「被害者等」の範囲

参加できるのは、
・殺人、傷害、危険運転致死傷など故意の犯罪行為により人を死傷させた罪
・強制わいせつ、強姦などの性犯罪
・自動車運転過失致死傷、業務上過失致死傷などの罪
・逮捕監禁、略取誘拐、人身売買の罪
・上記犯罪を含む罪(例:強盗傷害、強盗殺人、強盗致死傷、強制わいせつ致死傷、強姦致死傷、強盗強姦、逮捕監禁致死傷など)
・上記犯罪の未遂罪

について直接被害を受けた被害者やその法定代理人、または被害者が死亡した場合や心身に重大な故障がある場合には、被害者の配偶者、祖父母・父母・子などの直系親族、兄弟姉妹です。
これらの者を併せて、「被害者等」と呼んでいます。(刑事訴訟法290条の2)

被害者参加人にできること

1.在廷権(刑事訴訟法316条の34)
裁判に出席し、法廷の中で検察官の近くに座ることができます。
2.検察官に対する意見表明権および説明要求権(刑事訴訟法316条の35)
事件について、検察官に対し、広く要望を伝えたり、あるいは検察官から詳しく説明を受けることができます。
3.証人尋問権(刑事訴訟法316条の36)
情状事実(被害弁償や謝罪、今後の監督など)に関し、証人に対し、証言の信用性を争う尋問をすることができます。
4.被告人質問権(刑事訴訟法316条の37)
被告人に対し、犯罪事実及び情状事実などについて、広く質問することができます。被告人が黙秘権を行使しても、質問することができます。
5.被害者論告求刑権(刑事訴訟法316条の38)
犯罪事実や法律の適用(求刑など)について意見を述べることができます。
なお、被害者参加制度が施行されるより前から存在する制度として、被害感情や心情などを述べる意見陳述制度(刑事訴訟法292条の2)もあります。

被害者参加弁護士制度について

被害者参加制度は、上記のように被害者の生の声を直接伝えていくための制度ですが、裁判には専門・技術的な知識も必要です。
そこで、被害者参加制度とワンセットで、被害者を補佐するための被害者参加弁護士制度が導入されました。
弁護士はあくまでも被害者の意思を充分に尊重し、被害者が望むのであれば、できるだけ被害者自身が直接質問、尋問、論告求刑ができるようしっかりとサポートしていかなければなりません。
弁護士自らが訴訟行為をすることはできるだけ避けるべきでしょう。
被害に遭っていない弁護士に被害者の生の声ほどの重みを持たせることは難しいからです。
また、仮に弁護士が被害者の訴訟行為を代行する場合であっても、被害者の意思に反したことはできません。
たとえば、被害者が死刑を望んでいるのに、被害者参加弁護士が勝手に無期や有期の刑を求刑することは許されません。
その意味で、被害者参加弁護士には、被告人の弁護人とは異なり、「固有権」が与えられていないのです。
なお、被害者の資力が流動資産150万円未満の場合、国の費用で被害者参加弁護士をつけてもらうこともできます。
この場合、法テラスが事務を取り扱っています。

※ 国選被害者参加弁護士選定の資力要件及び日弁連委託援助の資力要件は、平成25年12月から、犯罪行為を原因として6ヶ月以内に支出することとなる金額を除いて、流動資産(現金や預貯金)200万円に変わりました。