損害賠償命令制度

損害賠償命令制度は、平成19年に法律が改正されて新設された制度です。

これまでの制度では、被害者は、加害者に損害賠償請求をしようとするときは、刑事裁判とは別に、民事裁判を起こさなければなりませんでした。
刑事裁判と民事裁判は全く別の手続で、裁判官も異なりますから、いくら刑事裁判で有罪という結論が出たとしても、民事裁判では、被害者が、一から加害者の犯行を証明する必要がありました。
ですから、被害者は、自分のお金で刑事裁判の膨大な記録をコピーして証拠として裁判所に提出しなくてはいけませんし、訴訟を起こすために、高い印紙を納めることが必要でした。
これは被害者にとって、大変な経済的・精神的な負担です。

損害賠償命令制度は、このような負担を軽くするためにできた制度で、刑事裁判のときに損害賠償命令の申立てをしておけば、刑事裁判が終わったその場で、同じ裁判官が民事裁判を始めてくれます。
刑事裁判を担当した裁判官がそのまま民事裁判を取り扱いますし、刑事裁判の記録を使って民事の審理を行います。
ですから、被害者の負担で改めて犯行を証明する必要がありません。
また、請求額に関係なく、一律2000円の印紙を貼れば損害賠償命令の申立てができますので、その点でも被害者の経済的な負担を軽くしています。

損害賠償命令では、事件のことをよく分かっている裁判官が、加害者に責任があることを前提に審理をするので、審理回数は原則として4回以内とされています。
通常の民事裁判をするよりはずっと解決までの時間が短く、被害者の精神的な負担が軽くしています。

損害賠償命令制度の対象となる犯罪は、故意に人を死傷させた罪など、重大な犯罪ですが、自動車運転過失致死罪といった過失犯は対象とされていません。
これは、過失犯を対象とすると、刑事裁判の中で、民事の過失相殺を見据えた議論がなされ、刑事裁判の審理が遅れてしまうことが心配されたからです。

損害賠償命令制度は、被害者参加制度とともに、被害者を支援する制度の目玉として新設されたものです。
制度がスタートして以降、たくさんの方々がこの制度を利用しています。